なり手不足の解消になる? 地方議員の報酬アップ、「高すぎる」批判くすぶり広がらず 

2023年3月23日 8:30

議員報酬の引き上げを採決する議員ら=8日、阿久根市議会
 「人口が2.5倍以上の(隣の)出水市とほぼ同額。相当なアップだ」「人口が少なかろうと議員活動に差はない」。2022年9月の鹿児島県阿久根市議会特別委員会は議員報酬改定案を巡り、上げ幅への異論と肯定的な意見が飛び交った。

 議論の対象となったのは月額報酬(37万1000~26万3000円)を役職に応じ4万1000~3万6000円引き上げる案。最終的には賛成多数でまとまった。同案を踏まえた条例改正が今年の3月定例会で可決され、増額が決まった。

 同市議会の平均年齢は約68歳で、最年少でも50代半ば。市内には「報酬が高すぎる」との批判もくすぶるが、4月の改選に向けて議論をリードした議員の一人は「若い人が出ようと思えるよう専業でやっていける報酬が必要」と語る。

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 議員報酬は人口規模が小さい自治体ほど少ない傾向がある。全国市議会議長会などによると、市議の報酬の平均月額は人口50万人以上の72万1000円に対し、5万人未満では33万4000円(21年12月末時点)。町村議はさらに少なく、人口2万人以上で26万4000円、5000人未満は18万3000円(同年7月時点)。鹿児島県内24町村の平均は約22万8000円(22年7月時点)だ。

 福祉の仕事を掛け持ちする大隅地域の町議は「議員報酬だけでは生活が苦しく、貯金を切り崩すときもある。子育てしながら活動できる環境を」と訴える。

 前々回17年選挙で無投票だったさつま町議会は本年度、議会の在り方について町民に意見を求めた。若い人から特に挙がったのは「報酬の引き上げ」。県町村議会議長会長も務める宮之脇尚美議長は「議会が住民の代表としての機能を発揮するには、多様な人材が必要。報酬の在り方を議論する時期に来ている」と話す。

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 議員報酬の増額は、なり手不足解消に有効なのか。

 13年に月額5万円引き上げた霧島市では、改選ごとに立候者が増えている。定数26に対し、13年選挙は29人、17年32人、21年37人。当選者の平均年齢は13年59.8歳から17年57.84歳、21年55.69歳と下がり、21年の最年少当選は26歳で、女性は4人。阿多己清議長は「報酬の増額が、多様な政治参加を促す一つの要因になった」とみる。

 ただ、報酬の大幅アップに踏み切る動きは県内に広がっていない。南九州市議会は昨年12月、定数2減を決めたが、報酬改定は見送った。「コロナ禍で多くの市民が影響を受ける。今は上げる時期ではないとの判断だった」と議員の一人は明かす。

 増額への住民の反発感情は根強い。13年の霧島市議会の報酬増額に反対した藤井宏一さん(76)=同市溝辺=は「議会の情報提供が不十分で、市民への意見聴取もなかった」と批判。「報酬改定は議員や議会に対する信頼に関わる問題。より丁寧に進める必要がある」と指摘する。

(連載「地方議会の今 2023かごしま統一選」より)

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