市町村の半数が「女性議員ゼロ」の鹿児島県 周囲の無理解、同僚のハラスメント…「女がでしゃばるな」の風潮は消えない 

2023年3月24日 8:30

女性が選挙に立候補する際の障壁と解消法について意見交換する参加者=2022年10月、阿久根市
 「出馬のために離婚した。ばかじゃないかと周囲に言われたが、政治を変えたかった」「つらくて簡単に勧められない。だが、女性だから拾える声もある」。2022年10月、鹿児島県阿久根市での意見交換会で県内の女性議員の本音が飛び交った。

 同市議会は男性ばかりの「女性ゼロ議会」だ。会を主催したのは、政策決定の場に女性の声を届ける必要があると活動する県内有志のグループ「女性議員を100人にする会」(代表・平神純子南さつま市議)。改選を迎える今年4月の統一地方選に向けて女性候補者の掘り起こしを狙った。

 この日まで計2回の意見交換で、女性議員が自身の選挙経験や日々の活動を紹介してきた。取り組みは実を結び、1月までに新人1人の擁立が決まった。統一選全体では、計3人の女性候補を送り出す。

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 共同通信のアンケートによると、22年11月時点で県内の女性ゼロ議会は13。女性が1人の8議会と合わせると、県内43市町村の48.8%に上り、全国1741市区町村の女性ゼロ・1人議会の割合(39.7%)を9.1ポイント上回る。

 女性が増えない要因に議会内外の無理解を挙げる声は少なくない。20年に和泊町議会で唯一の女性議員となった山口明日香さん(28)は「選挙も議員活動も家族や周囲の理解がなければ不可能」と断言する。

 会社に勤め、0歳児を含む4人の子を育て、議会で災害備蓄用のおむつや生理用品の確保を訴えてきた。「続けられているのは夫の協力があるから」と話す。

 山口さんはオンライン化の必要性も痛切に感じる。0歳児を抱える身では遠方への出張は困難で、勉強の機会が減る。自宅から研修などに参加できれば、育児中の女性も政治に挑戦しやすくなるとみる。

 一方、ハラスメント(嫌がらせ)が女性の政治参画を阻む壁になっているとの見方もある。内閣府が20年度に都道府県と市区町村議会の議員に実施した抽出調査では、女性の57.6%が有権者や同僚から何らかのハラスメント被害を受けたと答えた。県内の女性議員の一人は「女が出しゃばるなといった風潮はいまだ消えない」と明かす。

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 100人にする会の平神代表は「女性が立候補を決意するには相当な勇気が要る」と話す。こうした状況を変えるため立候補のハードルを下げるべきだと指摘するのは、上智大の三浦まり教授(政治学)だ。

 三浦教授は、議席の一定数を女性に割り当てる制度の導入や女性が議員にならなくても政策を提言できる機会の設定を提言。「人口の半分以上を女性が占める中で、女性議員ゼロは異常。そのような決定に政治的正当性はない」と訴える。

 女性をはじめ多様な人材が政治に参画しやすい環境づくりと意識改革が、議会にも有権者にも求められている。

(連載「地方議会の今 2023かごしま統一選」より)

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