石川県白山市で、40センチ大の恐竜の足跡らしき化石発見。肉球のような膨らみも。1億3千万年前の白亜紀、周辺には大型の恐竜がいた? 

2023年9月10日 17:30

恐竜の足跡にたまった泥が固まったと思われる化石(白線で囲んだ部分)。長さ約40センチで、肉球のような膨らみがある=6月、石川県白山市
■サラリーマン化石ハンター・宇都宮聡さん

 巨大獣脚類の化石を追い求めて入った石川県の白山国立公園の山中で、カメらしき化石を発見しました。カメがいるような水辺には恐竜も集まります。これまでの経験から、カメの化石が出る中生代の地層からは、恐竜の化石も発掘されることが多いのです。

 興奮してハンマーで掘り込んでいると、崖の下から東京都市大学の中島保寿准教授が私を呼ぶ声が聞こえてきました。どうやら何か見つけたようです。

 降りていくと、中島さんが、崖から落ちた転石の一つを指さしました。表面には凸状の膨らみが見えていました。「この膨らみは、恐竜の足跡の可能性がある」と指摘します。指は不明瞭ですが、確かに恐竜の足裏の肉球のように見えました。

 手取層群が分布する、石川、福井、富山、岐阜の各県では、恐竜の足跡の化石が幾つも発見されています。

 特徴的な足跡なら、恐竜の種類まで分かる可能性があります。例えば、富山市の大山地域の手取層群からは、5本の半円状の指先が並んだ前脚の跡の化石が発見され、よろいで体を覆ったアンキロサウルス類の可能性があることが分かりました。

 私たちが白山で見つけた足跡は不明瞭な凸型なので、恐竜の特定は難しそうですが、約1億3千万年前の白亜紀当時、この崖周辺に大型の恐竜がいたことは確かだと言えそうです。カメの甲羅の化石が出た地層をさらに掘れば、恐竜の本体化石が出てくる可能性は高いでしょう。

 今回の調査は国立公園内ということもあり、最低限の掘削作業にとどめました。今後、鹿児島県長島町の獅子島調査と並行して発掘を進めることになりそうです。

【プロフィル】うつのみや・さとし 1969年愛媛県生まれ。大阪府在住。会社勤めをしながら転勤先で恐竜や大型爬虫類の化石を次々発掘、“伝説のサラリーマン化石ハンター”の異名を取る。長島町獅子島ではクビナガリュウ(サツマウツノミヤリュウ)や翼竜(薩摩翼竜)、草食恐竜の化石を発見。2021年11月には化石の密集層「ボーンベッド」を発見した。著書に「クビナガリュウ発見!」など。

(連載「じつは恐竜王国!鹿児島県より」)

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