もうミスは許されなかった…H2A打ち上げ成功、国産ロケット信頼回復の糸口となるか 続くH3、イプシロン 

2023年9月8日 9:01

上昇するH2Aロケット47号機=7日午前8時42分、南種子町の種子島宇宙センター
 三菱重工業は7日午前8時42分、日本初の月面着陸を目指す小型探査機「SLIМ(スリム)」とエックス線分光撮像衛星「XRISМ(クリズム)」を載せたH2Aロケット47号機を鹿児島県南種子町の種子島宇宙センターから打ち上げ、予定の軌道で分離した。H2Aは2005年の7号機から41基連続で打ち上げに成功し、成功率は97.87%となった。

 H2A47号機に求められたのは、何よりも結果だった。「イプシロン」6号機、「H3」1号機と日本の基幹ロケット打ち上げは相次いで失敗。高い成功率を誇るH2Aでもミスが続けば、国産ロケットへの信頼は失われていた。成功の意義は大きい。

 世界の衛星受注競争は激しさを増す。重視されるのは「価格」と「信頼性」とされる。コスト削減が課題の日本にとって、最大の強みはH2Aが積み上げてきた高い信頼性だった。

 専門家は「H2Aまでつまずけば、国産ロケット全てが失敗し、日本には打ち上げ能力がないと世界に判断されていた」と指摘。日本の宇宙開発を左右する打ち上げだったと言える。

 3月に失敗したH3と共通機器を使うH2Aの打ち上げは当初、大幅にずれ込むとの見方もあった。だが宇宙航空研究開発機構(JAXA)は、機体を失った「H3」1号機の失敗要因とH2Aとの関係を特定することに固執せず、安全性を高める方法を選択した。

 想定される事故シナリオを綿密に洗い出し、全てに対策を施した。同様の手法は「H3」2号機でも踏襲される。日本は打ち上げ回数で米国などに大きく後れを取る。失敗してもスピード感を持って成功につなげる運用は、ますます重要性を増すだろう。

 土俵際で踏みとどまる形となった国産ロケット。ただH2Aは50号機で役割を終える。次世代を担う「H3」と「イプシロン」の真価が問われるのはこれからだ。今回の成功を信頼回復と技術の進化への足掛かりにしたい。
【表】最近の国産基幹ロケットの経過がよく分かる
ごう音を上げ上昇するH2Aロケット47号機=7日午前8時42分、南種子町の種子島宇宙センター

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