「男性ならではの感性…逆にある?」 岸田首相発言に疑問の声 専門家「無意識の偏見を拡散」 

2023年9月15日 21:42

岸田文雄首相
 岸田文雄首相が5人の女性閣僚を起用した内閣改造を巡り「女性ならでは」という言葉を使ったことに、鹿児島県民からは「性別によるイメージを押しつけている」と疑問の声が上がっている。一方、批判に「ぴんと来なかった」と自戒する人も。ジェンダー(社会的性差)の専門家は「社会の性別役割分担意識を助長する恐れがある」と問題視する。

 岸田首相は13日の会見で、女性閣僚らについて「女性ならではの感性、共感力を十分に発揮してもらいたい」と述べた。これに対し、交流サイト(SNS)などを中心に批判が殺到。松野博一官房長官は14日の会見で「多様性の確保が重要で、女性閣僚に個性と能力を十分に発揮してほしいとの趣旨」と釈明した。

 「逆に『男性ならではの感性』があるのか。女性に決まった役割を求められているみたいで嫌な気持ちになった」。鹿児島市の大学4年生女子(21)は15日朝、スマートフォンで見たニュースで首相発言を知った。「個人としての評価ではなく、女性という理由で入閣したような感じがしてしまう」

 同市の大学2年生男子(20)は「性別によらない多様性が重視される時代。立場のある人の言葉として不適切」と断じる。岸田首相に差別する意図はなく、無意識に出た発言だとも感じており、「ジェンダー観のアップデートが追い付いていない」と分析した。

 さつま町の自営業男性(42)は、首相発言について「一度聞いただけでは、どこが問題かぴんとこなかった」と明かす。批判報道などに触れたことで「自分自身、多様性などについて考えるきっかけにしたい」と顧みた。

 鹿児島大学の原田いづみ教授(ジェンダー法学)は、発言に対し「個人の能力に性別は関係ない」と断言する。日本社会では「女性はきめ細やか、優しい」といった旧態依然とした女性像が根強い。「発言の背後には女性はこうあるべきという性別役割分担意識が透けており、それを期待した閣僚の選任自体恐ろしい」と危ぶむ。

 首相の言葉は、社会に対する影響力があり、性別に対する固定観念が再生産される恐れもある。「たとえ悪気がなくても、無意識の偏見を社会に拡散している。まずは首相がそれに気付かなければならない」と言い切る。

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