「日本に来られて幸せ」…混乱のアフガンから出国 獣医師ハビビさん、鹿屋の農場で牛を相手に充実の日々 

2023年9月26日 14:55

森ファームで働くゴロ・ハビビさん=8月下旬、鹿屋市輝北
 鹿児島の有志の支援を受け、イスラム主義組織タリバン復権後のアフガニスタンを出国したゴロ・ハビビさん(38)の一家7人が鹿児島に渡って半年がたった。獣医師の経験を生かし、鹿屋市の畜産会社に勤務。「日本に来られて幸せ。農場の牛を世界で有名にしたい」と奮闘している。

 アフガニスタンは駐留米軍の撤退完了前の2021年8月、タリバン政権が首都カブールを制圧し、内戦で経済状況が悪化。動物病院を経営していたハビビさんも職を失い困窮した。

 交流サイト(SNS)に出国を願う投稿をしたところ、17年に鹿児島大学へ留学した際の県内の知人が気付き、渡航費などを募ってくれた。今年3月に来日が実現。鹿屋市の森ファームに就職した。約1200頭の牛を飼育する同市輝北の農場で、飼育作業員に病気の予防や衛生環境を助言している。

 日本の畜産に携わった感想は「先端技術を活用した管理システムなど充実している。驚いた」。まだ簡単な日本語しか話せないが、国内での獣医師免許取得を目指している。

 家族と一緒に暮らしているのは都城市。イスラム教の戒律に従った「ハラル」認証の食品が充実し、同郷の出身者が多いという。先月自動車免許を取得、会社所有の車で輝北に通勤している。

 アフガンではタリバンと旧国軍の戦闘は終結したが、経済の崩壊や干ばつによる飢餓が深刻だ。「大人も子どもも生きるために必死に働いている」とハビビさん。獣医師の資格を持つ兄弟は、経済状況の悪化のため働き口がないという。

 ハビビさん一家も金銭的な理由から、5人の子どものうち上の3人が学校に通っていない。悩みは尽きないが、可能な限り日本で生活したいと仕事に打ち込んでいる。「農場の牛が健康的で上質な肉に仕上がるよう、熱心に働きたい」
牛の体調を確認するゴロ・ハビビさん=8月下旬、鹿屋市輝北町

注目のニュース