豚熱ワクチン「接種に3時間」「いつまで打ち続ければ…」 生産者、負担増を懸念 輸出停止の影響も不安視 

2023年9月28日 9:06

豚へのワクチン接種の様子=27日、鹿児島県内(県畜産課提供)
 豚熱の感染拡大を抑えるためのワクチン接種が27日、鹿児島県内でも始まった。県は大規模農場を皮切りに順次ワクチンを供給していく。国が推奨地域に指定する限り接種は続くため、生産者は作業や費用の負担増のほか、豚肉輸出停止の影響を心配する。

 接種対象が約3万3000頭に上る大隅養豚生産組合(垂水市)は同日、接種を始めた。担当者によると、従業員40人中25人が打ち手としての研修を受講済み。10月半ばの完了を目指す。

 初日は1頭ずつケージに入り作業しやすい母豚中心に2300頭弱に打った。担当者は「日々の業務がある中、ワクチン接種だけで3時間以上はかかる」と話す。気がかりは肥育豚で、体重100〜120キロの豚を最大70頭ほど1カ所に集めている。豚が暴れて従業員がけがをする恐れがあり、安全面を不安視する。

 接種費用を懸念する声もある。県はワクチン管理や注射の手数料として1頭当たり70円、家畜防疫員が打つ場合は240円徴収する。初回一斉接種の約86万頭分は無償だが、現時点でそれ以外の免除の予定はない。

 接種票の交付にも費用が要る。鹿屋市の預託農家、上村隆志さん(73)は「うちは親会社が負担してくれるが、餌代などが高騰する中で手数料がかさめば、農家は経営が成り立たなくなる」と憤る。「いつまで打ち続ければいいのか。国は家畜伝染病予防法などに接種期間を明記すべきだ」

 食肉処理販売のナンチク(曽於市)も関連農場で接種を始めた。これに伴い同社では月15〜20トンの豚肉輸出ができなくなった。大田均常務(65)は「少なからず影響がある。政府は早期に輸出再開の見通しを示してほしい」と訴えた。
【別カット】豚熱ワクチンの接種の様子=27日、鹿児島県内(県畜産課提供)
各農場に供給する豚熱ワクチン(鹿児島県畜産課提供)

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