愛せる国づくり先 関心持つこと大事
記事素材に素直な意見

「愛国心」を考える授業のまとめとして、「国家とは何か」について意見を交わす生徒たち=鹿児島市の鹿児島情報高校
教材は、政府が教育基本法改正案を国会に提出した直後の4月29日-5月1日に掲載された南日本新聞など5紙の社説やコラム。「『愛国』をゆがめないか」と改正への動きに警鐘を鳴らすものや、各政党による本音での議論の必要性を訴えるものなど、さまざまな論調が掲載されていた。
授業では、討論を経てから、最後に生徒自身が「愛国心」をどう考えるかをプリントに書き、提出した。
「今の日本は荒廃している。そんな国を愛せというのか」「今の日本に、愛することを強制するほどの価値はない」-。プリントの記述で目立ったのは、愛国心をうたう前にまず、愛される国づくりをしてほしい、という意見だった。中には「『愛される国づくりのために何をしたか』という質問に自信を持って答えられる政治家はいるだろうか」との指摘もあった。
法律に文言を盛り込むことへ違和感を表す生徒も多かった。「他人に指示されて愛することが本当の『愛』とは思わない」「心は誰も侵してはならない。自分で育てるもの」「戦争中のように思えてしまう」など、愛国心を“いい”ととらえるかどうかにかかわらず、共通していた声だ。
一方で「愛国心といわれてもピンとこない。どういう言動をとれば『愛国心を持っている』と判断されるのだろう」「君が代の歌詞の意味を考えて歌ったことがあるだろうか」と、自問する生徒もいた。
愛国心をテーマに選んだ理由について、平田教諭は「(教育基本法改正は)われわれ教師にとっても、子どもたちにとっても、大きな問題。考えようによっては極めて政治的な話題だが、どういうふうに生徒が関心を示すか興味があった」と話す。実際の反応は「想像以上だった」。討論では、涙ながらに主張する生徒もいたという。
鯵坂智也君(17)=eプレップ科3年=は授業を振り返って「これまで自分で愛国心について考えることはなかった。一つの物事をここまで深く考えたのは久しぶり。(授業を)やってよかったと思う」。北川桃子さん(17)=同=は「国は、国民から日本が愛されていないとうすうす気づいていて、不安だから愛国心を押しつけようとしているのだと思う。それより、どうしたらいい国になるのかをみんなで考え、意見や関心を持つことが大事ではないか」と述べた。
「テーマが政治的かどうかにあまりこだわらず、生徒たちは率直な心をぶつけ合っていた」と平田教諭。「考えない若者が多くなったといわれて久しいが、そういう場を与えていないのが教育の現状。記事への批判や将来の日本への危惧(きぐ)など、若々しい感性にあふれていて、考えさせられるものが多かった」と話した。