読書は生き方探る指針/図書館の充実も手だて

活字文化に親しみ、振興するために図書館の充実などを求めたシンポジウム「言葉の力と日本の未来」=11月25日、東京都千代田区の日本プレスセンター
シンポジウムには各界から5人のパネリストが参加し、市民ら約400人が聞き入った。
日本新聞協会会長で毎日新聞社社長の北村正任さんは、自社の読書世論調査などを踏まえて報告。小学生の読書量は増えている一方で、青年層の活字離れが目立つと指摘し、「読書が楽しいという気持ちを育て、伸ばしていく必要がある」と話した。
経済同友会副代表幹事で、「資格の学校」として知られるTAC社長の斎藤博明さんは「本には成功や失敗などいろんな人の物語が書いてある。子どものころの読書で人生のイメージを膨らませることが大事。若い20代のときに本を読まないというのは国家的損失で由々しき問題といっていい」と話し、読み聞かせの重要性を訴えた。
日本労働組合総連合会会長の高木剛さんは「1950年代半ばからの集団就職時代、労働組合は中学校を卒業した15歳の子どもたちに“生活つづり方”を強く勧めたといわれる。それは毎日の生活の中で感じたことを書くことを通して、自分の生き方を探るためのものだった」と当時の冊子を紹介し、読み書きの大切さを指摘した。
作家の林真理子さんは「20代の方が本を読んでくださらないのは、作家にとっては死活問題。私は実家が小さな本屋だったこともあり、大型店よりも駅前の小さな書店などを大切にし、ベストセラーでなくても2番手、3番手の本を大事にして買うようにしている。私の子どもは本は読まない方で、親として見守っている」と話した。
国立国会図書館国際子ども図書館館長の村山隆雄さんは、中・高校生の朝の読書時間が2004年を境に減る傾向にあると報告。「読書の習慣化は、本の面白さに気付かせることにつながる。読書のすそ野を広げるために図書館の充実を図る必要がある」と語った。
論議を呼んでいる小学校での英語教育については、林さんらは「まず国語力をつけるのが大事ではないかと思う」と話した。
《アピール》
一、2007年10月をめどに「文字・活字文化推進機構」を創設し、家庭、学校、職場、地域で読書活動や新聞活用の教育など文字・活字文化の推進運動を展開する。
一、2010年を「国民読書年とする決議」の採択を国会に働きかける。
一、子どもたちの言語力、読解力をはぐくむため、「新学校図書館図書整備五カ年計画」を策定し、実施するよう国と自治体に強く求める。