未来を拓く鹿児島の教育シンポジウム「未来を拓く鹿児島の教育シンポジウム」(鹿児島県教育委員会主催)が8月8日、鹿児島市のかごしま県民交流センターでありました。「鹿児島の学校を元気に!~教職員の資質能力の向上を目指して~」と題したパネルディスカッションでは、南日本新聞読者センターの中原克巳がパネリストとして参加。マスコミの視点から意見を求められた中原は社会部の教育担当時代に取材した県内の元気な授業や他県の実例を紹介し、集まった約200人の教員の耳目を集めました。

パネルディスカッションは①教師に求められる資質能力とは何か②それを身につけるためには何が必要かという流れで進みました。中原は冒頭で鹿児島の教育の良さについて、「いい子どもが育つ」都道府県ランキング(岐阜・大垣共立銀行シンクタンク調べ)で鹿児島が2007年に3位、2010年に5位と上位だったことを紹介。全国学力テストとともに行われたアンケートを基に「近所の人にあいさつするか」「人の気持ちがわかる人間になりたいか」「将来の夢や目標があるか」という項目で鹿児島の子どもたちは上位に入り、「子どもの育ちの質」が高いと評価されています。一方で、課題として、1人で悩んでいる先生が多く、周囲の協力や相談をもらった方がいいと指摘しました。

途中、会場に集まった参加者へのアンケート結果が提示されました。教師に一番大切な資質はという問いには、①実践的指導力②豊かな人間性や社会性③学び続ける力の順に答えが挙がりました。中原は「実践的指導力」に関連し、南日本新聞で連載している「情熱教室@かごしま」を紹介。有明中の音楽の授業で生徒を引き込むうまさに感嘆しながら「授業には山場があるとわかった瞬間があった」と振り返りました。また福井県教委は10人の先生を「授業名人」に選び、授業の様子をDVDにした上で、勉強会も支援しているという実例を挙げました。

福島第1原発事故後に近くの学校に取材したとき、不安を抱えた子どもたちを支えていたのは、鹿児島から人事交流で行っていた「先生」だったこと。先日取材したミュージシャンの「カサリンチュ」が音楽を始めたきっかけは「先生」が弾いてくれたギター。30、40年後に同窓会で声がかかるのも「先生」だから。すてきな職業だから、誇りと使命感をと、最後にエールを送りました。

県PTA連合会の岩佐睦美副会長、丸屋本社の玉川惠社長、伊敷中の前山隆史教諭、建昌幼稚園の和田幸一郎園長の計5人がパネリストでした。岩佐副会長は親の立場から「先生たちは自信を持って。トラブルがあってもこうこうこうだからと説明してくれればわかる親は多い」。玉川社長は「私たちの会社でも同じだが、倫理や道徳観といった根っこにある考え方を大事にしてほしい」と話しました。活発な議論は2時間近くに及びました。

(角倉貴之)