鹿児島大学教育学部・南日本新聞社共催公開講座1鹿児島大学教育学部と南日本新聞社共催の公開講座「新聞を活かす教育Ⅱ~NIEの効果を問う~」が12月21日、同学部であり、70人が集まりました。同学部教授らによる新聞の読解力調査を基にパネルディスカッションがあり、NIE(教育での新聞活用)の効果や手法について、会場からの質問を交えながら活発な議論が展開されました。

調査は同学部の上谷順三郎教授、溝口和宏教授、田口紘子講師が鹿児島県内小・中・高校・大学の918人を対象に行い、報告しました。富士山の世界遺産登録決定の記事を読み取る国語の問題、登山者が増えることで起こる問題を調べるための事実と理由を考えさせる社会の問題が出ました。結果は、NIE活動の実践校と非実践校の間に大きな差はなかったが、実践校では小学校で記事を読み取る力、中学・高校は複数の情報を関連づけて考える力に効果が見られました。

鹿児島大学教育学部・南日本新聞社共催公開講座2パネルディスカッションは、武隈晃・教育学部長をコーディネーターに県高校教育課参事の山﨑巧・新設中高一貫校「楠隼(なんしゅん)」校長と南日本新聞社の岩松マミ・読者センター長が加わりました。山﨑校長は、2015年に開校する楠隼で学校や寮に新聞を置き、「言語探求学」の科目を構想していることを紹介、「社会を担っていく子どもたちが自分の考えを自分の言葉で筋道立てて表現できることが大切」と話しました。

国語の問題をつくった上谷教授は全般的に「記事から情報を読み取り、伝える力が弱い」という調査結果を受け、「読む力だけでなく、書く力も必要と再確認した。読めていないと書く方にいけない。一読してわかるような新聞記事を先生が読み聞かせるような体験を」と提言しました。会場から調査について「国語では問題文(記事)の中から答を探さないといけないが、社会では問題文にないことも考えなければならない」と指摘がありました。社会の問題を作成した溝口教授は「高度情報化社会の中で情報を選択、判断する力が求められる。正確に理解することに加えて、(問題文に)書かれていない部分をふまえて反省、対抗する力が必要」と答えました。

実践の手法について、田口講師は「教材を1つに固定すると限界があるし、増やすと教材研究が負担になるジレンマがあるので、いろんな使い方を知ってほしい」とアドバイス。NIEに長く取り組む鹿屋市立西原小学校の永田清文校長は会場から「あくまで授業が主体。新聞記事の活用は単元の目標、授業の目的に沿って使う」と原則を紹介しました。

岩松センター長は新聞社の立場から「反対意見に攻撃的な社会の風潮を感じている。新聞で視野を広げることで考えが違う相手の立場を理解することに寄与できれば」と語りました。武隈学部長は「課題が明確になった。今後もNIEの連携を深めていきたい」と結びました。

(角倉貴之)