新聞を教育に活用するNIEの在り方について考える公開講座鹿児島大学と南日本新聞は20日、新聞を教育に活用するNIEの在り方について考える公開講座を鹿児島市の同大教育学部で開いた。学校関係者ら約60人が参加した。

同学部のNIE研究会が、県内の小、中学、高校、大学生990人を対象に実施した新聞の活用・読解に関する調査の結果を報告。小、中、高、大の発達段階や、継続的に新聞を活用しているNIE実践校と非実践校を比べて分析した。

同大付属小で多くの家庭が講読しているのに対し、講読していない大学生が52%に上った。「新聞は役立つ」との回答は全体の65%以上あった。新聞の活用法ではNIE実践校で「感想を書く」「調べ学習」「要約」などがあったが、同大付属中学校では「記事比較」があった。

記事のリード文を読んで「どこで」「だれが」「なぜ」「どのように」「何を」の順で要約させる設問では、小、中、高、大と発達段階が上がるとともに正答率も上昇したが、「なぜ」に対する正答率は低かった。分析した同学部の上谷順三郎副学部長は「理由を含んだ文章を作るのが苦手なようだ。記事自体に対する知識も不足している」と指摘した。

記事に書かれている内容を深く考えるために、どのような事実を調べる必要性があるのかを問う設問では、NIE実践校と非実践校の回答を比較。実践校の児童・生徒は、記事の主題に沿った事実を挙げた割合が非実践校よりも高かった。

2つの記事を読み比べて共通性を読み取り、事例を一般化して考える力を問う設問では、小、高の実践校と付属中の正答率が高かった。溝口和宏教授は「新聞記事を比較して読むことの効果ではないか」と話した。

調査結果を受けてのパネルディスカッションもあった。同学部の上谷副学部長をコーディネーターに、溝口教授、田口紘子准教授、県教委義務教育課の中野均指導監、広木小の松木義幸校長、岩松マミ南日本新聞社読者センター長が、NIEの在り方をテーマに意見を交わした。

溝口教授は「教科ごとのNIEの使い方を意識すべきだ。主題と関連付けて資料(記事)を読み取る力は、社会科とNIEで共通して育てられる」と指摘。田口准教授は「教師や保護者が『NIEは有益だ』と思って実践することが大事。NIEの効果を目に見える形で示せば、保護者や周囲の教員や学校にも広がる」と提言した。

実践校でも「新聞は役立たない」と答えた生徒がいたことについては「新聞の楽しみ方を指導者が教えるべきだ」「点数を取るための学習だと新聞を思うと、子どもたちもつらいのではないか」などの意見が出た。

NIEを実践する上での注意点では、松木校長は「学校長が一方的に押しつけるのではなく、みんなでやっていくことが必要。なぜNIEなのか話し合うことが大事」。中野指導監は「学習指導要領の趣旨に乗っ取って、バランス感覚を持って教えてほしい」と話した。

(中原克巳)